クールなアイドルの熱烈アプローチ

『わあっ!そこって大きな植物園があって有名なところですよね!!』

いいなー。と羨ましそうに呟く声が聞こえたと思ったらすぐに陽菜が、あっ!と声をあげた。

『ごめんなさい。
遊びに行くんじゃないのに……』

「いや、構わない。
……植物、好きなのか?」

『植物も好きですけど、植物園が好きなんです。
亜熱帯植物とか日本で見られない植物があったり、薔薇園も種類が豊富で楽しめます。
あ、ちょっとここからじゃ遠いですけど、話題の植物園があるってこの前ヘアメイクさんに聞いて……トロピカルな雰囲気のカフェがあって、そこで食べるアイスがすごく美味しいらしくて……』

そこまで陽菜が話しているのを黙って聞いていた勇人はやがて小さく肩を震わせた。

初めはあんなにおどおどしていたのに何度か会ううちに打ち解けて、今は電話越しと言えど自分の好きなことに関して饒舌に話しているのがとても面白かった。

出来れば会って話したい。
目の前で楽しそうな笑顔を見ながら自分の好きなことを話している陽菜の話を聞いてみたい。

そう思った瞬間に、勇人の口から自然と言葉が出ていた。

「今度……」

『え?』

「今度、一緒に行ってみるか?
その植物園に……」

その誘いの言葉に驚いたのは陽菜か、言い出した勇人か、はたまた近くで会話を聞いていた朝陽と拓也なのか、或いは全員かはわからないが、斯くして二人は偶然にも被っていた休日に植物園に行く約束をしたのだった。