「越名さん、お久しぶりです」

以前家で話しただけあって勇人には拓也に接する時とは違って落ち着いて話せるようになっていた陽菜に勇人がふっと表情を緩めたのを見て、陽菜も目を細めた。

「久しぶり。元気だった?」

「はいっ!越名さんもお元気そうで良かったです」

ほのぼのと二人で話す後ろで拓也は二人に気付かれないようにそっと堀原に近付き、ねえねえ堀原さん。と小声で話しかけた。

「見た?堀原さん。勇人のあの表情。
長い付き合いだけど、あんな嬉しそうな顔見たことないんですけどー」

「それを言うなら、うちの秋村もです。
この世界に入って、こんなに短期間で自然体に誰かと話しているところを見たのは初めてです」

「二人に早めの春が来たんですかねー?」

“春”と形容した言葉に堀原は眉間に皺を寄せて拓也を見ると、拓也は二人に気付かれないよう声を落とし、真面目な表情で堀原に視線を寄越した。

「まさか、そちらは恋愛禁止とかっていうルールですか?」

「いえ、うちの事務所は基本的に自由です。
スキャンダルにさえならなければ、ですが。
そちらは?」

「うちも基本、自由ですね。
ま、あの様子じゃ二人とも気付くのに時間かかりそうですけど」

拓也と堀原は談笑している陽菜と勇人に視線を移すと、勇人は普段テレビで見る時とは違い口許に笑みを浮かべ目を細めており、陽菜も肩の力を抜いてリラックスしているようだった。