「今までは俺が護ってたんですけど、芸能界って世界までは護りにいけないんで。
だから勇人さん、俺の代わりに陽菜姉のこと頼めますか?」

「……何で俺なんだ?」

「他に芸能人の知り合いなんていないですもん」

カラカラと明るく笑う朝陽に勇人は若干戸惑う。
いきなり大事に護ってきたと言う姉を託されても。と思う勇人の心中を察してか、それに……。と朝陽は付け加えた。

「勇人さん、見てた感じ陽菜姉のこと満更ではないでしょ?」

「は?」

「え?」

朝陽の言葉にキョトンとした顔をする勇人。
鳩が豆鉄砲を食ったような顔と言うのはこんな顔かもしれないと思うほど目を丸くしている。
そんな勇人の様子に朝陽もつられたように目を丸くしていた。

「え、あ、まさか勇人さん、気付いてない?
うわぁ……マジかー……ええー……?」

と右手で口を覆い一人でなにやら呟いている朝陽。
まったく意味の分からない勇人と朝陽の目が合うと、朝陽はヘラッと笑った。

「うん、わかった。勇人さん、その時が来たら頼みますね。
じゃあ、またいつか!」

自己完結したらしい朝陽は最後に勇人の肩をポンッと叩くと大きく手を振り歩いてきた道を走って帰っていった。

「……その時?」

一人、何も分かっていない勇人はその場に立ち尽くして朝陽の背中を見つめていた。