クールなアイドルの熱烈アプローチ

一回目のアンコールが終わる直前に拓也は朝陽が帽子を深く被り、ライブ関係者が動き回るステージ下の中央に陣取ったのを確認した。
周りのスタッフと朝陽が合図を送りあい、一人のスタッフが拓也に合図を送ったのを見ると、拓也はしっかり頷いた。

アンコールが終わっても動く気配のない拓也を不審に思ったらしい勇人は肩で息をしながらじっと拓也の様子を見ている。
拓也が左手を上げるとステージ上を照らしていたライトが突然消え、拓也にだけスポットが当たった。

『みんなー!!今日は楽しんでくれてありがとー!!
二回目のアンコール行く前に、少しだけ時間くれるー!?』

拓也のその言葉に何も聞いてなかった勇人は驚いていたが、スタッフも観客も驚くことなく笑顔で、いいよー!!と叫んでいる。

『前さー、勇人がライブ中に大胆なことしてたよねー?覚えてるー?』

もちろーん!!
プロポーズ、格好良かったー!!

『実はさ、公開プロポーズに対抗して公開生報告しようとしてる人がいるんだけど、すーっごく緊張してるみたいだから、みんな応援してあげてくれるー!?』

いいよー!!
頑張ってー!!
応援してるよー!!

観客はすごく盛り上がっているが勇人は意味が分からず戸惑っている。

『じゃ、連れてくるからライト消してー!!』

拓也が走り出すとライトが消え、ステージは完全に真っ暗になった。

暫くして拓也がさっきまで立っていた位置と勇人が立っている位置にだけスポットが当たると、そこには緊張して固まっている陽菜が立っていた。