「んー……熱、はないと思うんだけど……。
少し体が火照ってる感じはするかな?」

「ちゃんと熱測ったの?」

「うん。微熱程度で熱はなかったよ」

朝陽と陽菜の会話を聞きながら、勇人はじっと陽菜を見ていた。
顔色は悪くなさそうだけれど、どこか無理して笑顔を作っているような感じがする。

やはりどこか体調が悪いのだろうと判断した勇人は陽菜の傍まで行くと躊躇うことなく抱き上げた。

「ひゃ……っ!?
ゆ、勇人さん……!?」

「寝かせてくる」

「や……私そこまでしんどくなくて……ゆ、勇人さんっ!」

陽菜が慌てて何かを言っているが勇人は有無を言わさないとでも言いたげに寝室へと向かった。

背後で、やっぱ陽菜ちゃんが関わったらあいつ性格変わるわー。とか、陽菜姉には勇人兄さんくらい強引な人の方が良いんですよ。とか言いながら片付けている声が聞こえてきたが、とりあえず無視をしておいた。

寝室に入りベッドに寝かせる頃には焦っていた陽菜も大人しくなっていた。

「勇人さん……」

どこか不安そうに見上げてくる陽菜の額や頬に触れ、熱がないか確認するが、それほど熱くなかったので微熱と言うのは本当だったのだろう。
勇人は陽菜の頭を一度撫でると、すぐに戻る。と言って寝室を出ていった。