「あー、俺見たことある。
音楽番組のトーク中に陽菜姉のこと聞かれた勇人兄さん。
ネットでもすごかったよねー」

「朝陽君はテレビ越しだろ?隣で聞いてた俺なんて砂糖吐きそうになったって!」

なにやら盛り上がってる二人に勇人は眉を潜める。
いきなりマンションに押し掛けてきたと思ったら、ジュースやおやつを大量に持ち込み人を話のネタにしているようだった。

「それにしても勇人兄さん、よく言えましたよね。
“どうしてライブのステージ上でプロポーズしたんですか”って聞かれて……」

「“誰かに奪われる前に確実に手に入れて、同時にみんなに知らしめたかったから”だろー!?」

拓也が勇人の真似をして言ってみるが、最後には二人して、うわー!!あれ、全国ネットで放送されたんだろ!?恥ずかしくて言えねー!!と叫んでいた。

ーーそんなに騒ぐようなことだろうか?

思ったことを言って、後悔しないように行動しただけで特別なことは何もしていない。
行動せずに誰かに陽菜を奪われるのだけは嫌だった。
ただそれだけだったのだが……。

「……ただいま帰りましたー。
あ、朝陽、古河さん、いらっしゃい」

「お帰り陽菜ちゃん、お邪魔してまーす」

「お帰り」

リビングのドアを開けて陽菜が顔を出す。
聞いていた予定より少し早く帰ってきた陽菜をじっと朝陽が見つめ一言、陽菜姉、熱?と言い放った。