楽しかった旅行もあっという間に終わり、陽菜は満悦至極と言った様子で帰りの飛行機に乗っていた。

「勇人さん、楽しかったですね!
海ガメも、海も、パンケーキも、アイスも、全部いい思い出になりました!」

「よかったな」

はいっ!と元気よく答えて窓から遠ざかるハワイの様子を見ている陽菜を勇人は無言で見つめていた。

“天国の海”の後に目的のアイスを食べに行ったのだが、思ったよりもボリュームがあったのには驚いた。
さらに驚いたのはそれをペロッと、しかも三つも追加して幸せそうに食べていた陽菜の体だった。

「……どこに入ったんだろうな」

この細い体に。と呟くと、陽菜は、何か言いましたか?と振り向く。
勇人は苦笑すると、また旅行に行きたいな、と言ったんだ。と言って誤魔化した。

暫くすると陽菜は連日のはしゃぎ疲れもあってか、いつの間にかぐっすり眠っていた。
そんな陽菜の左手を取り、気付かれないようにそっとシンプルな指輪を細い薬指に通した。

新婚旅行と一緒に結婚指輪のことも忘れていた勇人は、この旅行で渡すタイミングを見計らっていたがなかなか渡せなかった。
起きた時の反応が楽しみだと、よく眠っている陽菜の唇に優しく口付けると指輪をした陽菜の手と指を絡めて繋いで、そっと目を閉じた。

日本に到着して目が覚めた陽菜が指輪に気付くなり泣いてしまい、慌てるはめになるまであと数時間ーー。