「先日はありがとうございました」

勇人は以前、陽菜との対談記事の件で“無理な頼みがある”と訪れた雑誌の編集部に再び来ていた。
勇人の目の前にいる担当者はにこにこと笑っていて上機嫌であることがわかった。

「こちらこそ、ありがとうございました。
“秋村さんとの対談内容はカットせずにそのまま記事にしてほしい”
“だけど、雑誌に載せるのはこちらから連絡があるまで待ってほしい”
“その代わりトップ記事になりそうな内容を二つ、優先的にお教えします”
と言われた時には疑問だらけでしたが……まさか、大堂さんの引退に関する騒動の写真や映像を撮りやすい位置付きで教えてくれるなんて……!」

多数の記者に潜り込んでもらってはいたが、無理をお願いするこの雑誌社だけはインタビューや写真が撮りやすい先頭や映像を撮る為に朝陽がいた音響室などにいてもらっていた。

「おかげでうちの雑誌、売上が右肩上がりですよー」

「それは良かったです。
それで、対談の記事の件ですが……」

「あ、それなんですけど……大丈夫ですか?
越名さん、一般人の方とスクープされてましたが……」

心配そうに問いかけられるが、勇人はふっと微笑んだ。

「問題ないです。なるべく早く記事を出してください。
それから……二つ目のトップ記事になりうる情報です」

勇人は数枚のライブチケットを差し出すと、担当者は目を丸くして首を傾げた。