「大丈夫か?」

「……越名さん……」

陽菜を抱きしめたのはカメラマンの格好をして潜入していた勇人だった。
心配気に見つめる勇人に陽菜は苦笑する。

「緊張しすぎて……全部終わったって思ったら……腰が抜けちゃいました」

陽菜の答えに安堵の息をついた勇人は陽菜を抱き上げた。
所謂お姫様抱っこの状態に周りの全員が歓声を上げ、一部のマスコミがカメラを向ける。

「この写真はまだ撮らないで。
今度、もっといいもの撮らせてあげるから」

ーーもっといいものって何っ!?

と陽菜を含めた全員が思うが口には出せず、マスコミも笑顔で、約束ですよ?期待してますからね。とカメラを下げ大堂の方に戻って行った。

陽菜は恥ずかしさから勇人の胸に顔を埋めるが、それも恥ずかしい。
勇人が陽菜の控室に歩いて向かう道中も固まって動けなかったのだが、勇人はそんな陽菜の頭にそっと口付けていた。