クールなアイドルの熱烈アプローチ

リハーサルが終わり控室に戻ってきた陽菜と堀原はすぐに陽菜の鞄に歩み寄った。
二人で顔を合わせ頷きあうと、中を確認する。

「……ありません。
読み通り動いたようですね」

陽菜の言葉に堀原は念のために周囲を確認し、確実に手帳がないことを確かめるが、やはり見当たらない。

コンコンとドアをノックする音が聞こえ返事を返すと、小さくドアを開け顔だけを出した自信無さ気におどおどする英理がいた。

「あの、秋村さん……私も今日イベントに出演で……それで、一緒に着ぐるみを見に行きませんか?」

「着ぐるみを?」

「はい!その……今ならみんな休憩中で、好きに写真を撮っていいからって言われて……。
良かったら一緒に着ぐるみ達と写真、撮りませんか?SNSに載せたいんです」

そう聞いてきた英理に、堀原さん行ってみてもいいですか?と陽菜が確認する。

「……少しだけだぞ。
俺もイベントの確認が終わったらすぐに行く」

「はい、待ってますね」

堀原を置いて控え室を出て二人並んで廊下を歩くと、陽菜が小さな声で、まるで女優さんみたいです。演技上手ですね。と英理に話しかけた。
目線を合わせないまま英理は、本当は私、劇団員志望だったんですよ?と答えた。