「越名勇人。よろしく」

「……って、それだけかよっ!
せっかく陽菜ちゃ……秋村さんに出てもらうんだから、もうちょっと感謝の言葉を……」

「拓也は喋りすぎだ」

勇人の冷徹な眼差しを受けてもなお、拓也は面白そうな表情を崩さない。
二人の兼ね合いを唖然として見ていた陽菜は、またも堀原に肘で突かれ我に返った。

「あ、あの、古河さんっ!呼び方、陽菜で構いません。
越名さん、ご挨拶ありがとうございます。PV、頑張りますっ」

「そう?ありがとう、陽菜ちゃん。
いつも雑誌で見てて、いつか会ってみたいなって思ってたんだよ」

「あ、ありがとうございます。
私もお二人の事いつも見てました!あのっ、弟が大ファンでっ!」

「……そこ、弟がって言っちゃう?
陽菜ちゃんはファンじゃないの?」

くすくす笑いながら目を細めて見つめてくる拓也はとても楽しそうだ。
次はどんなことを話すのか、何をするのかと期待しているのが見てとれてしまい陽菜は若干パニックになってしまっていた。

「や……ち、違っ!もちろん、私もファンでっ!そのっ……も……もう、無理ーっ!」

堀原さん、助けてー!とタオルの端で顔を隠しながらその場にしゃがみこみギブアップ宣言をする陽菜に、拓也はもう限界と言うように腹を抱え、声を上げて笑いだした。

そして、そんな陽菜の様子を勇人は無言でじっと見ていた。