あのロケの騒動からずっと、堀原は多忙を極めていた。

事務所にいる時は問い合わせの電話の対応、外に出れば陽菜に関わっていた各関係者への挨拶回りと言う名の謝罪回り。
当事者の陽菜がいないことに難色を示す相手もいたが、ほとんどは大堂の言動に腹を据えかねていた相手が多かったので逆に陽菜の心配と労いの言葉をかけてもらったりと、安心できるところもあった。

謝罪回りが終わり事務所に戻ると、まだ鳴り止む気配のない電話のコール音の中、社長に早く帰れと言われた。

「しかし、電話が……」

「これくらいの対応は誰でも出来る。
秋村陽菜はお前の担当だが、お前だけが責任を追うことはない。
これは事務所全体の問題だ。たまには周りにたよれ」

言われて周りを見ると、事務所にいる全員が堀原を見て、任せろ。と疲れた様子や苛立ちなど全く見せずに笑みを浮かべて頷いていた。

「大堂恭矢……うちの大型新人をこの業界から追いやろうとしたツケを払ってもらうまでは、絶対に終わらせんぞ」

凄みを持たせながら言い放った社長は、これで話は終わりだ。と言うように背を向けると、鳴り響く電話の一つを手に取り対応をし始めた。

その姿に堀原は深々とお辞儀をするが、どことなく台詞が極道じみてるのを感じ人知れず顔を強張らせた。