朝、陽菜は眩しい光といい香りで目が覚めた。
ぼんやりする頭で辺りを見渡すと、自分の家のどの部屋でもないその様子に寝ぼけていた頭が一気に覚醒した。

ーーいけないっ!ここ、越名さんの部屋だった!!

37階建ての34階に位置するこの家は3LDKと一人で住むには充分すぎるほど広かった。
たまに拓也が泊まるくらいで他にベッドはないと言われたのでソファーで寝ると言う陽菜に、大事な人をそんなところで寝かせられない。と言われ勇人のベッドを借りることになったのだが……。

ーー緊張して眠れないと思ったのに、ぐっすり眠っちゃった……。

落ち着いた雰囲気の部屋と、ベッドで微かに香る勇人の匂いにドキドキしながらも安心しきって眠ってしまったらしい。

コンコン。と部屋のドアをノックされ、慌ててベッドから飛び降りた陽菜は返事をしながらそっとドアを開ける。

「おはよう。
よく眠れた?」

「……はい」

気恥ずかしくて目線をさ迷わせる陽菜の頭に勇人の手がそっと乗せられると、寝癖ついてる。と小さく呟かれた。
陽菜が慌てて両手で頭を押さえると、勇人はクスクスと笑った。

「朝食にしよう、準備ができたらおいで」

それだけ言ってリビングに戻っていく勇人をぼんやりと見送ると陽菜は赤くなっているであろう顔を両手で押さえて俯いた。

「古河さん……私、頑張れないかもしれません……」

陽菜は居候二日目の朝から弱音を吐いていた。