クールなアイドルの熱烈アプローチ

驚いてる間に陽菜は勇人に手を引かれ、あれよあれよと言う間に車の後部座席に乗せられ、今はタワーマンションの一室の広いリビングにあるソファーに座っていた。

カチコチに固まってる陽菜の前のテーブルにコトンとカップが置かれたそれは、ほわっと湯気が浮かび、微かに甘い匂いを漂わせていた。

「ハニーホットミルク……?」

「好きだろう?」

「はい……でも、どうして……?」

「前読んだ雑誌に載ってた。
それを飲むと落ち着くって」

それは見落としてしまいそうなほど小さい記事だった気がするが、勇人はしっかり覚えていたらしい。
そっとカップを両手で包み一口飲むと、柔らかい甘さが広がり自然と笑顔になる。

「おいしい……ありがとうございます、越名さん」

陽菜の言葉に勇人は小さく微笑むと、陽菜と人一人分の間隔を開けて座った。
改めてリビングを見渡すと全体的にシンプルな家具が多く、落ち着いたデザインとなっている。

ーーあまり考えたくないけど、ここはもしかして……。

陽菜がこのマンションの一室の持ち主に検討をつけたと同時に勇人が口を開いた。

「暫くここにいるといい。
俺の家だが、他に誰もいないから」

やっぱり……。と陽菜は乾いた笑いを浮かべた。