掴まれた手首の力はいつの間にか緩んでいたけどそんなこと気づく余裕もなかった。
生まれて初めて、男の子からこんな感情を向けられて。
どうしていいか分からない。
きっとものすごく赤くなっている顔をなんとか誤魔化そうとしてみても、上手くいくわけもなく。
じっと私を見る千藤君の目から逃げるように、顔を背けた。
「すぐ返事くれとか言わない、
この前まで"友達だ"とか言っちゃったし。
きっとびっくりしてるだろうし、困らせると思う。
だけどお願いだから、避けるのだけはやめて?」
顔を背けた私に言い聞かせるような声色で言った千藤君は、そっと私の手首を離した。
「田宮さんが友達がいいっていうならいいよ、今はそれでも」
今は、ってどういう意味だ。
やたら意味深なセリフをさらりと吐いた千藤君は不意に私の顔を両手で包んで目線を合わせる。
目を合わせた千藤君は、思っていたよりも鋭い目をしていた。
「だけどアイツには絶対渡さないから
それだけ覚えといて」
そう言ってにっこりと笑った千藤君の顔をぽかんと見つめるしかできない。
なにが起きているのか頭がついていかない私を置いたまま、千藤君はひらりと手を振って帰っていった。

