市ノ瀬君と千藤君を避けて1週間経った。
2人とももう諦めたのか、待ち伏せされることもなくなった。
だからきっと、私は気を抜いてしまったんだと思う。
図書館で借りた文庫本を読みながら下駄箱へ向かい、帰ろうとした時だった。
「田宮さん」
不意に低い声で名前を呼ばれてびくりと肩が震える。
「……千藤君」
振り向いて視界に入った顔に、反射的に身を翻して逃げようとした。
そんな私を逃すまいと、大きな手が私の手首を掴んだ。
強い力で引きとめられて、睨むように千藤君を見つめる。
「なに?私急いでるから離して」
「嫌だ、離したらまた田宮さん俺のこと避けるだろ」
「避けられてる自覚あるならもうほっといて…」
私の言葉にあからさまに傷ついた顔をした千藤君に、少し胸が痛くなる。
下を向いてしまった千藤君だったけど、手首を掴む力は弱まることはなかった。
なんとか振りほどこうともう片方の手で千藤君の手を剥がそうとした時だった。