「あー、これ酷いね。
捻挫だけど、治るの結構時間かかるよー」

薬品の匂いと白い壁、
保健室なんてあまり縁がないからそわそわしてしまう。

困ったように言った先生の言葉に私は下を向いた。

ぶすっとしたようにそっぽを向く市ノ瀬君の左の手首は痛々しく腫れていて、思わず顔が歪む。
湿布を貼ってその上から包帯を巻いてもらい、ちゃんと病院で診てもらうようにと促す先生に見送られて保健室を出た。

誰もいない廊下はしんと静まり返っている。

苛立ったようにぐしゃりと髪をかきあげた市ノ瀬君に、小さな声で謝った。


「…別に、謝られても困る」

「でもバランス崩したの私だし、
市ノ瀬君が支えてくれなかったら私大怪我してたから…」

「キモいから謝んな」

そう言って舌打ちをされてしまった。

その言葉にまた下を向いてしまう。


あの時宙に舞った私を受け止めてくれたのは他でもない、市ノ瀬君だった。

私ごと下に落ちた市ノ瀬君は左手をついてしまい、見事に捻挫してしまった。

…これを私のせいと言わずしてなんと言うのか。

しかも、顔も見たく無いだろう私を庇って怪我したなんて。

そう思うと申し訳なさで消えてしまいたくなった。