千藤君と別れて自分のクラスへと戻ろうと、階段を降りる。

最近お昼休憩が前よりずっと楽しみになった。
やっぱり友達っていいな、と思う。
誰かと一緒に食べるお昼ご飯って美味しいし、楽しい。

千藤君に何かお礼しようかな、なんて考えながら歩いていた時だった。


下から登ってきた人に思わず目を見開いた。


「…いちのせ、くん」


見下ろした市ノ瀬君も私と同じような顔をしていて。
無理もない、避けていた女とばったり会ってしまったのだから。

金縛りにあったようにその場から動けない。

市ノ瀬君も片足を階段に置いたままの姿勢で固まっている。


浅い息をして、なんとか身体を動かそうとした時だった。


「あ、」

ふわりと嫌な浮遊感がして、
まずいと思った時にはもう遅かった。

踏ん張る地面が無いまま、身体が宙に浮いた。

「…っ、おい!!!」

やけに焦ったような市ノ瀬君の声が近くで聞こえた。