隣接する家に住む三歳年上の彼女は、兄の思い人。
そして、僕が誰よりも大事にしたいと思い、一生報われることのない想いを寄せる、女性。
「流くん、今帰り? 委員会でもあったの?」
僕が渡した傘を逆に僕の方に傾けて、一つの傘に二人入れようとしてくれる。
「いえ、友人の掃除を手伝っていまして」
傘になんとか収まってから、僕の頭や肩で少し融けてしまった雪を払い落としてくれた。
「そっか、優しいね」
「いえ。潤さんは?」
傘を僕より小さく低い位置にある手から受け取り、傘を持つ役目を買って出て、歩き始めた。
家までは三分ほどの距離。
時間が止まってしまえばいいのにと、思う。
「私も大学の帰り。友達に新しいチョコが出たって聞いて、買って帰ろうかなって思って」
ほら、とコンビニ袋の口を広げ、中身を見せてくれる。
白い袋の中には色とりどりの四角いチョコが、雑多に入れられていた。
「沢山買われましたね」
「三種類同時に発売したからさ。そういうのって、全部制覇してみたくならない?」
悪戯っ子のように瞳をきらきらさせ、潤さんは楽しそうに話し掛けてくれる。
その様子を見ていると、こちらまで心が浮き足立つようだ。
「それは楽しそうですね」
自然と彼女に感化され、笑みが零れる。
彼女はコンビニ袋に手を入れて、幾つかの色を取り出す。
「いっぱい買ったから、流くんにおすそわけね」
不思議なことに掌に乗せられたのは、同じ色を二つずつ、合計六つのキューブ。
「ありがとうございます」
少し触れた彼女の指先の暖かさとともに、一口サイズの冷たいチョコたちをブレザーのポケットに滑り込ませる。
限りなくゼロに近い距離にいる彼女のお陰か、寒さが気にならなかった。
しかし楽しい時ほど流星のように早く過ぎ去るもので、すぐに家に着いてしまった。
彼女の家の門まで行き、傘を返す。
彼女との距離は簡単に開き、僕は自宅の門を開けて玄関前のポーチで雪を払った。


