「何かあったら絶対に知らせて下さいね」
「もうわかってるわよ」

朝からこの会話を何度したことか。
心配してるのはわかるけれど、子供じゃないんだから一回言えばわかるのに。

迎えたお茶会当日。

この日のために新しく用意したドレス。
髪型も普段よりも凝ったものにして、アリアに馬鹿にされないように完璧に仕上げた。

結局、護衛はウィルの信頼できる部下にお願いした。ウィルは最後まで自分が行くと主張していたけれど、なんとか説得させてクロード公爵家の前で待機するということで落ち着いた。

「じゃあ行ってくるわ」

馬車がクロード公爵家の前に止まる。
「私が何かあったと判断した時は勝手に乗り込みますので」
「‥勝手にしてちょうだい」

馬車から降りるために伸ばされた手に自分の手を重ねる。
そう、何かあったらウィルがこの手で助けてくれる。

「行ってくるわ」

リリィはクロード公爵家に足を踏み入れる。