「お兄様、今よろしいですか?」
「珍しいな、ここまで来るなんて。どうしたんだ?」
執務室にはルークだけがいた。
他の文官や側近の人達は出払っているようだ。
あまり聞かれたくない話だから丁度よかったわ。
「実は、先ほど人間に会いました」
リリィがそう言うと書類を読んでいたルーク一瞬固まってから、リリィを見る。
「は?どういうことだ?」
「いつも通り薔薇園を散策していたら人間と鉢合わせしてしまいました」
「人間には部屋から出るなと言っていたはずだが」
ありえないとルークが額に手をつきため息を吐く。
「しかもクロード公爵が庭を案内してましたわ」
「クロード公爵が?…そうか。リリィ、クロード公爵には気を付けろ」
まさかお兄様もクロード公爵の本性に気づいている?
「わかりました。記憶を消し損ねてしまったのですが私が消してきた方がよろしいですか?」
「いや、リリィは人間に近づかない方がいい。私がどうにかする」
「お願いしますわ」
「リリィ。今までは、お前のヴァンパイアとしての力が強いことと、この城の厳重な警備から護衛なしで城を歩くことを許可していたが今後は護衛をつけるように」
「わかりました。それでは失礼します」
城の中までも誰かにずっと見られているのは辛いがこうなってしまった以上仕方ない。
パタンと扉を閉めて、自分の住んでいる塔へと戻ろうと来た道を歩く。
「あ、お兄様にエスコート頼めるか聞くの忘れたわ」
戻ることも考えたが、お兄様はきっと人間の対処で忙しい筈だ。
緊急ではないから、今度にしよう。
面倒事を増やしてしまったわ。
とりあえずクロード公爵には近づかないようにしなければいけないわね。

