「お兄様はどう考えていらっしゃるのですか?」

お兄様はまだ王太子だが国王であるお父様はほぼ政治については引退しており、基本的にお兄様が行っている。

つまり、国王であるお父様だけでなくお兄様の命令も絶対だ。

「ヴァンパイアの力はヴァンパイアだけに与えられたものだ。ーー人間に渡すつもりはない」


その言葉を聞いてリリィはとりあえず自分が差し出されるわけではないことにホッとした。


リリィのその様子を見たルークは、

「リリィ、お前は政治の駒ではない。大事な家族だ。そんな簡単に自分が売られると思っていたなんて兄として悲しいぞ」
「そういうわけでは‥ただ私は私の責務を果たすつもりで」
「誰もそんなこと望んでいない」
「それは‥」

バッサリと切り捨てられて、リリィは何を言えばいいのかわからなくなる。

じゃあ私はどうすればいいのだろう。

「自己を犠牲にしても誰も喜ばないよ。王女だからと諦めないで自分の心に従って生きなさい」
「‥」
「人狼とも協力して戦争は起こさせない。だからリリィは何も心配しなくていい」


ルークはそう言うと、戸惑っているリリィの肩を軽く叩いてから部屋を後にした。