「俺が蹴散らしてこようか?」
「それもいいけれど、目立ちたくないのよ。私の力でどうにかしたほうがいいわ」
「待って、あの馬車の紋章…人間の王族の物だ。それに人間の匂い、間違いないよ」
「嘘でしょ…」
なぜヴァンパイアの国に?
まさか…ロイとの会話がよみがえる。
「めんどくさいことになったな。これじゃあ余計身分がバレたらまずいじゃん」
「まずいどころか外交問題までいくわよ…とりあえずは護衛に行ってもらうのが一番良さそうね」
リリィがそう言うと護衛は静かに頷き、走って行く。
「このまま国に帰ってくれないかしら」
わざわざ使者まで遣わすということは何かあるということだ。
「あの男うるさいんだけど。まだ喚いてるよ」
護衛は頑張って説得を試みているが男は聞く耳を持たないで小さな子供に当たり散らしている。
「護衛じゃ難しいんじゃないかな?やっぱり俺がどうにかしてこようか」
「じゃあ、あの男の視線を一瞬でも私に向けて欲しいわ」
「それはお安い御用だよ」
そう言った近くにあった枝を思いっきり男に向けて投げつける。
「うっ…ぐあっ痛い!なんだ!?!」
運動神経抜群のロイは見事に男の頭にヒットさせた。

