「とてもいい匂いがするわ!パンかしら?」
「パンだね、多分あそこの右曲がって二軒目かな」
「流石人狼なだけあって鼻がきくわね」
町に出ると、平日の午前中ということもあり通りにはあまり人がいない。
そもそもヴァンパイアは目が特殊なため日光が余計に眩しく感じるので午後から活動が活発になるのだが。
リリィも日傘をさして日光を遮っている。
「ロイはどこに行きたいの?」
「行きたいっていうか町が見たかったんだよね。やっぱり色々俺たちの国とは違うからさ」
「そうなのね」
人狼や人間の国はどうなっているのかしら。
リリィは生まれてこのかた国から出たことがないのだ。だから本や他の者から聞くぐらいでしか情報を得ることができない。
「ロイの国行ってみたいわ」
「来てよ。リリィが来れるように頑張るからさ」
「えぇ。楽しみにしてる」
「そのためには帰ってじじい共をどうにかしないと」
「お互い問題は山積みね」
「だから今日は現実から目をそらすのさ。明日から頑張るために息抜きも大事さ」
「ということは明日帰るつもりなの?」
「そうだよ。長居すると側近達に殺されるからね。それにいくらヴァンパイアの王がいてもいいって言ってもやっぱり俺は他の種族の王子だからさ、気を遣わせるわけにもいかない」
「あなたって何も考えてなさそうで考えてるわよね」
「あははっ!ずる賢いんだよ、俺は。ほら、行くよ!まずは甘いもの食べたいな」
「あ、ロイ走らないでよ!」
走るロイを慌ててリリィが追う。

