「おはよ〜リリィ。すっかり町娘の格好じゃん。そんなリリィも可愛いよ」
「はいはい、ありがとう。早く行きましょう」
町に出たら行きたいところがたくさんあるのだ。
早く行かないとあっという間に夕方になってしまう。
「待てお前ら二人で行かせるわけないだろう」
歩き出そうとしたその時、後ろからお兄様の声が聞こえて振り返る。
そこには仁王立ちのお兄様と騎士団の服を着た男の人が二人立っていた。
「えっ、まさか護衛もいるのですか?」
「当たり前だ。ロイがいくら強くても王子だぞ。流石に二人じゃ行かせられない」
そんな。護衛がいると何かあった時に逐一報告されるから嫌だったのに…!
昨日の夕食の会話からてっきり二人で行けると思っていたリリィは小さくため息をつく。
「そんなに俺と二人がよかった?」
「えぇ…そうかもね…」
「じゃあ後で護衛を撒けばいいよ」
「おい、何言ってんだ。頼むからやめてくれ」
「しょうがないわ。けれど私が王族の者だとバレたくないから離れて歩いてちょうだい」
万が一、ロイに何かあったら外交問題に発展する可能性だってある。
そんなことになったらリリィだけでは責任が取れない。
今日は諦めるしかないわね。
「てっきり護衛ならウィルくんが来ると思ったけど違うんだね」
「騎士団長だもの。私たちの護衛なんてしてられないわ」
「けど勝手に町に行く妹がいるせいで騎士団長がわざわざ町に連れ戻しに行って「行ってくるわ、お兄様!」
ルークに痛いところをつかれ、リリィはロイの服を引っ張りながら早歩きでその場を離れるのだった。

