仁美ちゃんが振り返った。
「俺、こんなふうに誰かを思うの初めてなんだ。護るよ。精一杯護る。絶対に譲らない。けど、どうすればいいかわからなくて、模索しっぱなしだと思う。当然間違うし、苛立つし、落ち込むと思う。だから、仁美ちゃんには力を貸してほしい。間違ってたら止めてほしいし、ダメなときは叱ってほしい。あと、男の俺じゃ庇いきれないとことか、助けてほしい。本気なんだ。だからっ!」
 俺は両手を握りしめた。
「もちろんよ」
 仁美ちゃんが笑った。
 俺以外のヤツが見たら、妖艶って笑みなんだろうけど、俺には自信たっぷりな助けの神の笑顔に見えた。
「俺も力になるからさ」
 リューイチが俺の肩を叩いた。
「じゃっ、後でね」
 仁美ちゃんが駆けていった。
「心強いな」
 リューイチが独り言のように呟いた。
「まったくだ」
 俺は答えて笑った。
 ホッとしているのはどうしてだろう。
 仁美ちゃんには何度も「護れるの?」って訊かれてきて、何度も答えた気になっていたけど、今、ようやくちゃんと答えられた気がする。
「先生が来たぞ」
 リューイチが腕を引っ張った。
「ヤバッ」
 慌てて教室に駆け込む俺の後ろから、
「生徒会が生徒の模範にならなくてどうする!」
 いかつい学年主任の怒鳴り声が響いた。

Fin