「ニコ、どっち食べる?」
 俺が尋ねると、ニコは俺に笑いかけてから、「こっち」と粒々果汁が入ったミカンアイスの棒つきを手に取った。
 『ああもう、今の「こっち」の笑顔だけで、俺の心臓はバクバクだよ。コンチクショーッ!』と内心叫んだのは、毎度のことだけど内緒だ。
 俺の手には、カップのアイスクリームが残った。味はナッツクリーム。
「ニコ、どうした? 俺の顔をチラチラ見て」
 ニコに意識されるのは嬉しいけど、何か警戒されてる気がする。
 両思いになれてまだわずか。
 片思いのときもだけど、両思いになっても、いつもニコにはドキドキさせられっぱなしで心臓に悪い。
 ニコが可愛すぎて、目が合うだけで心臓がズキュンと射抜かれたみたいに掴まれてしまうのは、俺だけだろうか。
 ニコも、毎日俺にドキドキしてるのかな?
 違う人間だから、両思いでも相手の気持ちはわからない。
 俺は『嫌われてないよな』とビクビクしながら、パッケージからアイスを取りだすニコを見つめた。
 ニコがオレンジ色の塊を見て、「美味しそう」と嬉しそうに目を細めた。
 俺はニコの顔色を窺いながら、小さいプラスチックのスプーンを手に取ると、アイスクリームよりニコを食べたいと思いながらビニール袋を外した。