「いや、日向さんを責めてるわけじゃなくてな」
 言葉に詰まるリューイチに、
「ここの掃除はアタシがします」
 見崎ちゃんと、
「私も」
 谷地ちゃんが名乗りをあげた。
「もう時間ないし、マモルがいるなら問題ないだろ。先に2人で始めてくれ。終わり次第駆けつけるからさ。じゃあ、後はよろしく」
 俺はニコちゃんを抱いたまま、リューイチと擦れ違う。
 その瞬間、
「すみません」
 リューイチへとニコちゃんが謝った。
 さっきから謝り続けるニコちゃんに、俺は苦笑しつつ階段へ向かう。
 そのとき、尻ポケットに何かが差し込まれたのが感触でわかった。
「お前は戻ってくるな。日向さんを家まで送れ。鍵は一番近くの掃除ロッカーの上に置いといてくれ」
 リューイチが俺の肩をポンと叩いた。
 くれたのは、生徒会室の鍵か。
 みんなの鞄、そこに置きっぱなしだからな。
「もう時間だ。ヤツらを待たせられないから行ってくる」
 リューイチが、俺たちを追い越して階段を駆け下りていった。