「行こう」
 ナナさんのかけ声に、
「片付けよろしく」
 1人が私に声をかけた。
 残りの2人が笑いながら「バイバーイ」「大人しくしてたらイジメないからね」と去っていくのが、遠ざかる声でわかる。
 このままじゃ明日、菅野さんはナナさんに告白されてしまう。
 もし、菅野さんがナナさんの演技に騙されて、受け入れてしまったら……。
 ダメッ!
「絶対にイヤッ」
 私はブレザーの胸の部分を掴んだ。
 抑えきれなくなった思いのまま、ドアを開ける。
 絶対に行かせない。
 やれることはただ一つで、それをしたら集団で暴力を振るわれると思う。
 けど、やられていいよ。
 それで、ナナさんを止められるなら構わない。
 私は個室から飛びだした。
 そのまま、トイレから廊下へ出る。
 去っていく4人後ろ姿を追いかけた。
 4人は私に気づかず、楽しそうにお喋りをしていた。
 私は両手を伸ばすと、1人にしがみついた。