「明日、もう一度告ろうかな~」
 ナナさんが態とらしく悩む声をだす。
「告りなって。あんときは大してナナのこと知らなくて振ったんだよ。去年からずっと同じクラスじゃん。今度は絶対うまくいくって」
「そう? アタシもそう思う」
「キャハハハハハッ! 何それ。でもさあ、うまくいかなきゃ困るよね」
「私、澤村くん紹介してほしい」
「ならアタシは月見」
「ちょっと待ってよ。それじゃアタシ、チビと地味顔の二択になっちゃうじゃん。アタシも月見がいいわ~」
 自分勝手な妄想で話を進める4人に、私は大切な人たちを侮辱された気がした。
 菅野さんや会長と月見さんは高く評価されているのに、どうしても貶されているようにしか感じない。
 これが嫉妬?
 相手を傷つけたくなる衝動?
 私は初めて我慢できない苛立ちを抱え、両手をそっとドアにあてた。
 このまま、相手を逃していいの?
 さっきまで、ここから逃げたかったのは私。
 けど、今は違う。
 なんとしても、ナナさんて人を止めたい。
 菅野さんを渡したくない。
 渡さない!