「マジかよ」
 俺の呟きに、
「こんな嘘、吐いてどうするのよ」
 唇を尖らせていた仁美ちゃんが溜め息をついた。
 アホか俺。
 ここは3階の端だ。
 ここから1階の自販機まで、俺のためにニコちゃんを行かせたなんて。ジッとしていられない。
 しかも、予算会の途中だ。
 俺たち生徒会が作った予算案が気に入らないヤツもいる。
 ただでさえ、一部の性格ブスから目をつけられてる状態だ。もしも、ソイツらに絡まれたら……最悪だ。
「ホント、恋は盲目もここまでくると害よね」
「小言は後で聞く。ニコちゃんを迎えに行ってくる!」
 俺は身をひるがえし、ドアへ向かった。
 今、一番許せないのは自分だ。
 俺のせいで好きな人を危険に晒しながら、仁美ちゃんに言われるまで自分の保身でいっぱいになってた。
 最悪すぎる。
 自分で自分が嫌いになる。
「罰として、飲み物代は全部大志持ちだからね!」
 仁美ちゃんの声を背に、俺は勢いよくドアを開けると教室を飛びだした。