「ウチに新加入した3人は、全員優秀なんだよ。サボらずに手ぇ動かして、俺らには自分の仕事をするようにって、3人だけでお前が今丸めてる冊子を作ったんだよ。塚本、お前さあ、いい加減何も知らずにあることないこと言う癖直せよ。それ以上煽るなら、俺らが中学んときにお前から受けた被害、残らずここでぶちまけてやる!」
 怒鳴った俺に、後ろから4本の腕が絡みついてきた。
 それは、ホワイトボードへの記入を任され、ずっと立っていたヒロと、俺の隣で座っていたはずのリューイチの手だった。
 2人掛かりで、力任せに俺を席へと戻す。
 俺は押さえつけられたまま歯を食いしばると、黙って腕を組んだ。
 俺の暴走により、全員が呆気にとられたのか、教室が静まり返った。
「では、ここで休憩にします」
 仁美ちゃんの慌てた声が響いた。
 いつもは一切発言しない仁美ちゃんだけど、非常事態と思ったのだろう。リューイチに代わって、進行するのは初めてだ。
「もう終わりかよ! 生徒会長の飼い犬が」
 俺の怒りにビビった顔をしていた塚本が、ニタニタと笑いだした。
 リューイチが態と咳払いをした。
「休憩前に連絡が4つ」
 リューイチはどっしりと構えたまま、当初の俺たちの作戦を遂行しはじめた。
「まず、ここまでのやり取りは、ここに取りつけた小型カメラで撮影中だ。これについては、ちゃんと校長の許可をある。文句があるなら校長に直接言うように。この撮影はあくまでも来年の予算会の参考のためで、公開はないから安心してくれ。ただ、あまりに酷い態度をとる生徒がいたら、団体生活において問題ありと考え、学年主任や教頭に報告する場合があるからな。これが1つ目。2つ目は、今期予算は開始したばかりで無理だけど、ベルマークを資金として、積極的にあてていきたいと考えてること。現物支給になるし、大した資金にならないかもしれないけど、やらないよりはマシだろう? 3つ目は、昨年度から、俺たち生徒会はすべての部とサークルに何度もヒヤリングを行ってきた。過去数年の活動実績も、西宮圭によってすべてデータ化され、パソコンに入ってる。侮辱や差別の野次はこの予算案に通らないよう、しっかりと練ってきた。早い話、休憩中に最低限確保したい予算を確認しておいたほうが無難だぞってことだ。4つ目はなんだっけ」
 リューイチが騒めく生徒たちに笑いかけた。
「ああそうだ。休憩は30分だ。これだけあれば、部に戻って予算の相談をできるだろう。それでは解散」
 リューイチが手を叩いた。