「でもまあ、結果的によかったんじゃないですか」
 ヒロが弁当を食べ始めた。
「どこがだよ」
 ケイが購買の紙袋から焼きそばパンを取りだすと、慣れた手つきでラップを外していく。
「大志くんが今まで振ってきた女子全員と、3人に絡んできた今日の女子たちには、漏れなく『性格ブス』ってレッテルがついた。しかも、そのとき体育館にいた全員が、大志くんの口から『性格ブス』の基準を聞いてしまった。噂は早いから、その場にいない人の耳にも届いてるはずだよ。そしたら、全校生徒全員が『大志くんが振った女子は漏れなくブスだ』『生徒会の新メンバーにイチャモンつける女子は漏れなく性格ブスだ』って意識するよね。つまりさ、大志くんに告白して振られたことをまわりに知られてない女子は、確実に大人しくなると思わない? 3人を快く思わない女子も『性格ブス』と思われたくないから、表向きには大人しくなる。要するに、まだ行動を起こしてないヤバい連中の動きを、ある程度封じることに成功したってことだよ」
 さすがはマモル。
 あの瞬間、態とまわりに会話を聞かせた俺の意図を、ちゃんと理解している。
「問題は、すでに行動を起こして『性格ブス』のレッテルを貼られてるヤツらだな」
 リューイチが唸った。
 相当腹が減っていたのだろう。早々と焼きそばパンを食べ切ったケイが、チョコチップメロンパンの封を開けた。
 その食欲、羨ましいよ。
 俺は全然食欲がわかない。
 母さんには悪いけど、よくある海苔弁風の弁当のご飯をグチャグチャッと掻き混ぜた。
「今さらではあるが、ヤツらが大人しくいい子ぶるか。それとも、過激派に転ずるか」
 リューイチが、俺の一番の不安を言い当てた。