「副会長って性格ワルッ」
 リカちゃんが呟いた。
 ヤバい!
 今の、絶対に菅野さんに聞かれちゃったよ。
 私は『もう相手を怒らせちゃダメ』の願いを込めて、リカちゃんの袖を引いた。
「ニコ、安心して。『性格ブス』と『性格が悪い』は全然意味が違うから」
 ハルちゃんが楽しそうに教えてくれた。
 そうなの?
 私は首を傾げると、そういうことじゃなくてと首を横に振った。
 そうだとしても、どちらも悪い意味だよね。
 菅野さんに悪口を聞かれたら、これから生徒会での手伝いがしにくくなっちゃうよ。
 菅野さんはいつだって素敵な人だよ。
 多分、今は疲れが溜まってたのか、ちょっとイライラしただけだと思うの。
「それで?」
 会長はリカちゃんの言葉には興味がないとばかりに、私たちへ顔をよせてきた。
「今日みたいな嫌がらせはいつから? 初めてじゃないよな?」
「火曜日と水曜日はパンダ状態だったので、直接には何も。けど、そのときから聞こえるように悪口は言われてました。直接は木曜日からです。アタシとリカちゃんは戦いますからさほどじゃないですけど、ニコが……」
 ハルちゃんが息を吐いた。
 先輩だろう人たちから悪口を言われるようになり、リカちゃんとハルちゃんが何を怒り、何に警戒しだしたのか、私はようやく理解することができた。
 運動音痴とあがり症が致命的な私は、今までの人生、それでみんなの足を引っ張り、文句を言われることは多々あった。
 けど、リカちゃんやハルちゃんみたいな容姿じゃないから、嫉妬で『ブス』と言われることはなかった。
 けど、生徒会と関わりを持ったことで、言われるようになり、私はリカちゃんやハルちゃんが今まで受けてきたイジメを少し理解した。
 そして、大した容姿でもない私まで目の敵にされるほど、生徒会のメンバーは人気があるんだと知った。
「そっか。ゴメンな」
 全然悪くない会長が、静かに私たちへと謝った。
 菅野さんが怖い顔で黙り続ける。
 私は遣る瀬無さと悲しさと憤りとで、胸がいっぱいになった。
「俺が事態を甘く見すぎてた。こうなることを仁美が一番恐れてたし、予測してたんだ。なのに、大した対策も立てずにいて悪かった」
 会長が悲しそうに俯いた。
「会長は全然悪くないです。だから、謝ってほしくないです。私、会長や菅野さんみたいな凄い人といっぱいお話できて、わずかですけどお役に立てて、友達2人を巻き込んでるのに本当に幸せというか、楽しくて、みなさんと一緒に活動出来て嬉しいんです。それを、間違ったみたいに言われるのはつらいです」
 私は落ち込む会長を見あげて言い切ると、菅野さんと目を合わせた。