「確かにそこの3人ははしゃいでた。けど、それは止まってたときだよね。列、はみだしてなかったよね。移動中はちゃんと縦に並んでたよね。イチャモンはやめなよ。見苦しい。言うなら、正々堂々と本当のこと言えよ。そこの3人が煩すぎたんなら、それをストレートに注意すればいいだけだろ? まずは、自分からぶつかったことを謝れよ。……ぶつかったんじゃなくて、突き飛ばしたが正解か? ソイツと一緒に笑ってたヤツらも、『つまらない妄想で貶めてスミマセンでした』ぐらい、言えるよな」
 菅野さんは近づきながら淡々と言い終ると、面倒そうに髪を掻き乱した。
 先輩たちは顔を見合わせると、ゴニョゴニョと小さく聞き取りづらい声で謝り、列へと戻っていった。
「これだから、マジで性格ブスは嫌いなんだよ」
 いつもは優しい穏やかな菅野さんが、一転して、クールで人を寄せつけないオーラを放っていた。
「俺も性格ブスはイヤだな」
 菅野さんについてきた会長が、労わるように菅野さんの肩を叩いた。
 菅野さんは両手を腰に当てると、先輩たちが消えていった方を見つめた。
「だよな。俺、性格ブスからの告白は全部断ってるもん」
 菅野さんは何を思ったのか、声を張りあげた。
「お前、それって裏を返したら……。ったく、言い過ぎだろう」
 会長が頭を抱えた。
「これでよしっ」
 菅野さんが満足気な笑みを浮かべた。