「邪魔! 1年が騒いでんじゃないよ」
 美人だけど目つきが怖いた女子生徒が、私を睨みつけてきた。
 そして、前後にいた友達と一緒になって「ホントに邪魔! ウザいんだけど。マジ消えて~」と感じの悪い笑いをした。
 他の先輩の女子たちもクスクスと笑いだした。
「今の、完全にあの女の仕業じゃん。態と列をはみ出てまで当たってきて何それ? すっごく感じ悪いんだけど」
 怒りで少し高くなったリカちゃんの声が響いた。
 嫌な先輩たちの列が、千切れ、笑った人たちだけが足を止めてこっちを見た。
「1年のくせに生意気すぎんだけど」
 苛立ちを隠さない先輩たちの集団に、
「生意気じゃなく、素直なだけですから」
 いつもなら、リカちゃんの暴走をやんわりと誤魔化してウヤムヤにしてくれるはずのハルちゃんまで、逆らってしまった。
「コイツら、色目遣って生徒会に入ったんでしょ? サイアク」
「近くで見たら大したことないじゃん」
「ブスばっか」
 先輩たちが悪意に満ちた笑みを浮かべた。
 どうしよう。
 険悪な空気が広がりだしたよ。
 どうしたらこの空気を変えられるんだろう。
 オロオロする私の耳に、
「これだから性格ブスはイヤなんだよ」
 菅野さんの突き放したような冷たい声が、ハッキリと届いた。
 しかも、普段話す数倍の声量だ。