朝一番に身長を測ったら、1センチしか伸びてなくて、体重は2キロも増えていた。
 胸囲は相変わらずのまま、体重が増えたのはショックでしかない。
 落ち込みながら体育館へ移動した私に、
「身長分だよ。身長分」
 色々と程よく増えていたハルちゃんは、私を励ましてくれた。
「ニコは元々軽すぎなんだって。もっと増やせ! 贅沢ぬかすな!」
 リカちゃんからは、痛くないゲンコツを頂戴した。
 そうして、体育委員に促されるまま、私たちは反復飛びの列に並んだ。
「会長と副会長をハッケ~ン!」
 リカちゃんが体育館の端をさした。
 ここからそんなに離れてない。
 私は、初めて見る菅野さんの体操服姿にドキッとした。
 学年で体操服の色は違い、私たち1年は落ち着いた赤だけど、菅野さんたちが着ているのは紺だ。
 背筋を伸ばした菅野さんが、垂直板へ片手を伸ばしてあてた。
 そして、膝を曲げながら腕を振り、大きくジャンプ。
 真っすぐ綺麗な姿勢で飛んだ菅野さんの指先が、板の上の部分を叩いた。
「やる~っ!」
 リカちゃんが見直したみたいな声をあげた。
「いいのは、顔と趣味だけかと思ってた」
 ハルちゃんが意外そうな声を漏らした。
 私は、菅野さんのあまりのカッコよさに、心臓をバクバクさせながら祈るように両手を握り合わせた。
 菅野さん、やっぱり凄い。
 雲の上の存在だよ。
 それをこんな間近で見られて、毎日会話できるなんて、恐れ多いよ。
「ニコが乙女モード全開になってる」
 ハルちゃんの声に、私は慌てて指を解いた。
「今さら隠さなくても……」
 リカちゃんが、呆れたように溜め息をついた。
 着地した菅野さんは会長と笑顔でハイタッチすると、少し話をしてからこっちを見た。
 そして、手を振ってきた。
 えっ?
 もしかしなくても、私たちに手を振ってるんですか?
 いつから、私たちが見てたって気づいてたんですか?
 私は違う人に手を振っているかもとキョロキョロと相手を探した。
 けど、相手と思われる人は誰もいない。
 やっぱり、私たちに手を振ってくれてるの?
 私たちへ手を振ってるのなら、何かリアクションしなきゃ。
 私は小さく手を振り返した。
 すると、菅野さんが私たちを指さしながら会長と軽く何かを話し、今度は会長も一緒に手を振ってきた。
 これは、どうリアクションすればいいんだろう。
 手を振り続けるのは目立つから、会長へはペコリと頭を下げた。
 すると、会長と副会長が笑いだした。