「体育館に入る前に、書類がすべて揃っているかご確認下さい」
 美人さんが、学校名の入った大きな封筒を私に差しだした。
「ありがとうございます」
 私が両手で封筒を受けとると、美人さんが疲れたような溜め息をついた。
「日向さん、何かあったらいつでも相談してね」
 心配そうな顔をする美人さんに、私は恐縮しながらお辞儀をすると、逃げるようにテントをでた。
 今のは一体なんだったんだろう。
「ちょっとニコ。アンタ、あのメガネ美人と知り合い?」
 右隣りで受付をしていたリカちゃんと、
「受験日の朝、本当は何か他にも事件があったんじゃないの?」
 左隣りで受付をしていたハルちゃんが、テントから出てきて私を挟むと、声をひそませた。
「全然知り合いじゃないし、初めて会うし、私もわかんないよぉ」
 上級生に何か思われたみたいだけど、それがなんなのかわからない怖さに、私は強張った。
「身に覚えがないなら、忘れちゃいな」
 とリカちゃんが、
「ニコが可愛いのが悪いんだよ」
 と、ハルちゃんが慰めるような笑顔を見せて、ギュッと私を抱きしめてくれた。