「歩!宿題見せて?」

昼休憩、数学の宿題を見せてもらいに太一がやってきた。


「んーいいよ!はい」

上目遣いで頼まれれば断る理由もない。



「ねーあんたたち、前から思ってたけど付き合ってんの?」

一緒にお菓子を食べていた友人・紀美子が言う。


「え!?付き合ってないし!意味分かんなーい!!」


「そーなんだ!太一くん、モテてるよ?いいの?」


「付き合ってないっていってんじゃん!」


「でも好きなんでしょ?」


「う・・・なんで知ってるのぉ?」


「あんたたちなんて見てりゃ分かるわよ。告らないの?」


「だって自信ないしー・・・」


「だーいじょうぶだって!太一くんも絶対歩のこと好きだし」


「えマジで!?・・・ちょっと自信出てきた・・・」


「でしょでしょ!!?太一くんモテるんだから早めに捕まえとかなきゃね!」


「うん!ありがと紀美子!」





放課後になり、いつものように太一がやってきた。


「アユー一緒帰ろー」

「はーい」


ふたりは帰り道、誰もいない道をとことこと肩を並べて歩く。

歩は決心してこの帰り道で告白をすることにした。


「ねぇ!太一!!」


「ん?なにさ、アユ」


「ちょっと・・・太一に聞いて欲しいことが・・・」


「何?悩み事なら聞くけど」


「私・・・・・・太一のこと、好きなんだー・・・良かったら付き合ってほしい・・・なんて」


「・・・?え、ぇええ!!!?え、え?」

「太一、動揺しすぎ・・・」

「つーか・・・マジ?」

「・・・マジのつもりですけど・・・」


「・・・ありえねーよ・・・そんな・・・アユが俺に、告白・・・!?」



"ありえない"


歩は耳を疑った。

聞きたかったのはそんな言葉じゃない・・・


「太一の気持ちはよく分かったよ・・・聞いてくれて・・・ありがと!」


歩は不意に涙がこぼれ、逃げるように走って家まで帰った。