だけどたまたま好きになったその人は万人受けするタイプの顔の整い方をしていた。モトハルだってそれなりに整った顔をしている。が、癖が強い。男らしすぎる。要するにいまの時代にそぐわない。それはモトハル自身も気にかけているようで高校に進学してからの彼は見た目が少し変った。モトハルを見かけた私の友人はモトハルのことを格好いいと言った。それでもナオくんの整い方は別次元。ついうっとりしてしまうその顔立ちはそれだけで私の胸をときめかせる。
「先輩、そろそろ気をつけてね」
「大丈夫だって!」
駐輪場の入り口。とても使いづらいその入り口は自転車の侵入を阻むかのように狭い。そのくせみんな手前から止めていくもんだからこの時間になると自転車を止めるだけで一苦労だ。それだけが理由じゃないがナオくんはいつもこの場所に差し掛かると私に注意を促してくる。
「本当かなぁ。そろそろきそうなかんじがするんですよねぇ。先輩ってなんだかボケッとしてること多いし」
「あ、失礼な!違うよ?私のこれは何も考えていない故のものじゃなくて、むしろ考えすぎてのあれだから」
「どっちでもいいけど意識散漫は認めるんだ」
ああ。ずるい。彼は私にあきれているはずなのに。私は彼に小ばかにされているはずなのに。だけどそんなトーンでぼそりと呟かれたら私の心臓はどうしたって跳ねてしまう。
「うわっ!」
ドドドドドドド。
「先輩……」
ナオくんの忠告むなしく私は入り口から一つ目のポールまでの自転車をドミノ倒しにしてしまう。
「あ、あ、あ」
「ほら、そんなそそらない喘ぎ声出してないで戻すよ」
「先輩、そろそろ気をつけてね」
「大丈夫だって!」
駐輪場の入り口。とても使いづらいその入り口は自転車の侵入を阻むかのように狭い。そのくせみんな手前から止めていくもんだからこの時間になると自転車を止めるだけで一苦労だ。それだけが理由じゃないがナオくんはいつもこの場所に差し掛かると私に注意を促してくる。
「本当かなぁ。そろそろきそうなかんじがするんですよねぇ。先輩ってなんだかボケッとしてること多いし」
「あ、失礼な!違うよ?私のこれは何も考えていない故のものじゃなくて、むしろ考えすぎてのあれだから」
「どっちでもいいけど意識散漫は認めるんだ」
ああ。ずるい。彼は私にあきれているはずなのに。私は彼に小ばかにされているはずなのに。だけどそんなトーンでぼそりと呟かれたら私の心臓はどうしたって跳ねてしまう。
「うわっ!」
ドドドドドドド。
「先輩……」
ナオくんの忠告むなしく私は入り口から一つ目のポールまでの自転車をドミノ倒しにしてしまう。
「あ、あ、あ」
「ほら、そんなそそらない喘ぎ声出してないで戻すよ」



