《――――今夜は来てくれてありがとう、すごく嬉しかった》 そんなメッセージが踊る隣では、真っ赤なルージュによって色濃く付けられたキスマークがこれ見よがしに存在を誇張していて。 恐らく店名であろう名称と、反吐が出そうなほど媚び諂った源氏名。 一瞬の内に胸中を埋め尽くした感情に任せるままに紙をグシャリと握り潰し、名刺越しでも飛んできそうな香水を一蹴するように立ち上がった。