おそるおそる、自動ドアを潜って足早に受付へと歩を進めていく。

翔太にはバレていない筈。今朝のあいつの様子からして、あたしが今日こんなところに足を運ぶなんて予測すらしていないと思う。



「すみません」




激しさの増した動悸を感じながら、受付で何やら書類に目を通す女性に声を掛けてみる。

大丈夫。ちゃんと化粧室に入ってチェックしてきたから。

髪は珍しく一本に括っているし、化粧はまあ平素と変わらないけれどネイルは落として爪もちゃんと切ってきた。

それら全てを指示したモトである一枚の紙は、お気に入りのブランドバッグの底に沈んでいる。







「――――、はい?」






しかしながら、あたしみたいな女がこんな場所に来るのが珍しいのか。

何度も瞬きを繰り返した中年と思しき女性が、見る目明らかに訝しげな声音であたしに向かって問いを投げ掛けてきたから言葉に詰まる。

可笑しいな。いつも「見た目からして尻軽」と思われるらしいから、そこらを意識して少し身形を変えたつもりだったのに。




しかしながら、ここまで来たからには引き返すワケにはいかない。

申し込みだって既に済ませた後なんだし。