「翔太」

「あ?なに」




翔太と籍を入れてから数週間が経過したある日。

取り敢えず新居を構えるまでの間ということで、あたしは翔太の住むマンションに越してきていた。







漸く引越しの際の荷物整理が一段落したところで、コーヒーを口にする翔太を見据えて口を開く。


「――明日の夜さ、」

「………」

「会社の付き合いで飲みに行ってきたいんだけど」







その隻手に握られるのは新聞。

今日は日曜日。珍しく休日が重なったこともあって、ずっと家に居た訳なのだけれど。







"――すっげぇ妬いた"


あの日の言葉を気にする余り、そのことについて言及するまで結構な時間を要してしまった。






あたしは、翔太が「行くな」って言ってくれるなら断ろうと思っていた。

て言うか、その言葉を掛けて欲しかっただけなのかもしれない。








けれど奴から向けられた言葉は全く違うものだった。



「あっそ」