「(だから手出してこなかったってワケ……)」


問題解決。あたしの取り越し苦労だったってこと。







思わず溜め息を零していれば、何やら勘違いしたらしい翔太が片眉を吊り上げてこんなことを口にし出した。


「――好美と俺はもう夫婦だってことじゃん」

「まだ婚姻届提出してないけど?」

「細かいこと気にすんなよ」









「(大分重大なことだと思うんだけど……)」







せかせかと言葉にしていく翔太を黙って見つめていれば、シュルッと音を立ててシートベルトが元の位置に戻っていく。

じゃあなんで途中まで引っ張ったりしたの?



何だかよく分からずに、疑問符を浮かべ怪訝な顔つきで視線を送っていれば。










「だからさ、もうここでシようぜ――」

「馬ッ鹿じゃないの!!」









言わずもがな、バシン!という音と共にあたしの大声が界隈に鳴り響く。

それが聞こえてしまったらしいおばさんが微笑みを浮かべていたなんて、後にも先にも知ることは無かったけれど。












―END―