「つーか、あのとき。マジで死ぬかと思った」





シートベルトを締めながら言葉を吐き出す翔太を見て、軽く首を捻ったあたし。

訊ねようと口を開き掛けた瞬間、



「あの、好美とくっ付いて寝たとき」

「――…っ、……」



先に言葉を落とされたものだからあたしのそれが音に成り切らず、吐息として車内に溶け込んで消える。









「あーいうのを蛇の生殺しって言うのか……本気で応えたわ」

「……、…そう」

「でも好美を遠ざけた原因って元を辿れば俺な訳だろ?だから、ちゃんと環境整えるまで我慢してたんだよ」







あたしの返答なんて待っていないのか、つらつらと言葉にしていく翔太を視線だけで捉える。

何故か途中まで引いた状態でシートベルトを止めた男は、



「――でも今日、ソレが叶った訳っすよ好美ちゃん」



妖艶に細めた瞳で此方に視線を流し込み、企みを仄めかす笑みを湛えてあたしをロックオン。









――…ふたりの左手薬指には、きらりと輝くものが既に通されている。