終わりだ、間違いなく終わりだ。

内心冷や汗だらだらの状態で綺麗と言わざるを得ない彼女の顔面を見つめていれば、その華奢な手が少し動いたことを視界の端で捉えてしまう。







――死ぬ…!


まるで自らの墓場は此処だとでも言うような顔付きで、両手をクロスしガードし掛けた瞬間。









「これ、ここ。ちょっとミスってるから明日までに直しといてね」

「え、……え?」

「今後は気を付けること――…って、なに?」









その隻手に握られていた書類を俺のデスクに置き、丁寧な説明でミスしたところを教えてくれた彼女を思わず凝視した。

そんな俺の態度を不審に思ったらしく、次第に眉根を寄せていくその上司を見てハッを我を取り戻す。



「いや、何でもないです!」

「……ホントに?」

「いやもう本当に…!命に懸けて何でもないっす!今すぐ直します!!」









思い掛けずそんな台詞を吐き出した俺を見て、「大袈裟ね」と。

綺麗な笑みで言葉を落とした彼女はそのまま自らのデスクに戻っていく。








そんな意外過ぎる姿を、俺は目を丸くして凝視していた。