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仕事を始めてから優に数時間が経過した。

ちらほらと帰宅準備に取り掛かる人も居て、それを視界に捉えてから今日やるべき自らの書類に目を向けてみる。








「(残業決定……)」


思わず内心で毒づく俺。








一度肩をまわしてから再度PCに向き直っていると、耳に入った高音の声にぎくりと背筋が強張った。


「――ちょっと良い?」






恐る恐るPCに向けていた視線を横へとずらしてみると、にっこりと人当たりの良い笑みを浮かべる女性と必然的に目が合う。

その人並み外れた美貌を誇る上司の笑顔というのは、俺にとって破壊力抜群の攻撃に他ならない。






何故なら、


「……な、なんでしょう…。先輩」










彼女が後輩に笑顔を向けるときイコール、そいつが何らかのミスを遣らかしたという方程式が成り立つからだ。

この場合の後輩というのは、今回俺のことを指す訳で。