その日の朝は、布団の微かな衣擦れが耳に届いて目が覚めた。

徐に隣へと視線を伸ばせば、今まさに起き上がろうとする翔太と目が合って。



「あれ、翔太……今日仕事だっけ」

「まあな。好美は休みだろ?寝てろよ」

「だってご飯、」

「いいよ。俺だってそんくらい作るし」






穏やかな微笑を浮かべた彼は、そんな言葉を零すのと同時に「キッチン借りるな」なんて。

思わず目を丸くして背を向ける男の姿を凝視していたあたしだったけれど。






「(ちょっと…、良い男なんじゃないの)」





内心ぽつりとそう呟きを落とすくらいには、既に翔太に首っ丈になっていたらしい。








リビングの向こうへと男が姿を消したことを確認してから、無に近かった表情から一変。

にやり、と。頬桁をこれでもかと言うくらい緩ませる。



「――…、……」


明瞭に見て取れるほど破顔させた面を布団を被って隠してみた。