「ねえ、あのさ。前も言った気がするんだけど……過保護じゃない?」

"ああ?んな訳ねーだろ"

「いやいや過保護だから!あたし今まで一人で生きてきたんだから、迎えとか別に要らないし!」




声に熱を込めてそう反論すれば、電話口向こうでこれ見よがしに溜め息が吐き出されて。

思わずむっと顔を顰めていると、予想すらしていなかった台詞がするりと飛び込んできた。





"好美"

「…、…なによ」

"俺が逢いたいの。好美に逢わねえと死にそうだから、今から迎えに行かせて"

「ッ、!」


不意打ち、だ……。





瞬時に染まった頬は翔太には見えていない筈だ。

それなのに、それすらも分かり切っていると言わんばかりに零された微笑がノイズへと姿を変えて此方の耳朶を柔らかに撫でた。






「……、別に」

"あ?なに"

「べ、つに!迎えに来てくれても……いいわよ」


何だこれ、あたしツンデレみたい。

思わず顔を背けてそう零した言葉は漸く彼の耳に届いたらしく、微笑混じりの「おっけ」という声と共に通話の終了を悟った。