嗚呼、もう。この状況を切り抜けるにはあたしはどうしたら良いのだろうか。




「好美ほら、早くサインしろよ」

「印鑑だって此処にあるわよ?」

「好ちゃん、どうしたの~?」



「……え、っと…」



これでもかと此方の顔を覗き込んでくる男女―――もとい、翔太とあたしたちの母親に苦笑を零して応酬するしか術がない。




場所は実家のリビング。

時刻は…そうね、さっき翔太と和解してから数時間も経ったかしら。





四人で固まるように腰を下ろしたチェアが囲むテーブルの上には、ドラマでしか見たことが無い書類が一枚乗せられていた。



「あの……早くない?」


既に記入されている翔太の名を凝視しつつ、ちらりと視線を上げたあたしはそう零す。







「あら、好美あんた何言ってるの?」

「だって婚姻届だよ!?」


きょとんとした顔を傾げてみせた母親に噛み付くようにそう言えば、斜め向かいに着座するおばさんがギョッとした表情を浮かべた。